真に成果を上げる組織に必要な『心理的安全性のつくりかた』
「心理的安全性」というワードがここ最近で急に浸透してきているように感じたので、教養としても知っておきたいと思い呼んでみました。マネジメント向けとされていますが、サブリーダーやメンバーといったレベルでも実践できることが多く、役立つことが多いです。
著者
株式会社ZENTech取締役、チーフサイエンティストの石井遼介氏が執筆されています。略歴はここ。『組織・チーム・個人のパフォーマンスを研究し、(中略)心理的安全性の計測尺度・組織診断サーベイを開発するとともに、ビジネス領域、スポーツ領域で成果の出るチーム構築を推進』しているそうです。なんかすごそう。
本書の中でも言及されてますが公演もよくやっているそうです。
概要
- (日本における)心理的安全とは、以下が保証された状況をいう
- 率直な意見や問題などの「話しやすさ」
- トラブル対応や成果物品質向上のための「助け合い」
- 時代の変化・状況の打開のための新しいことへの「挑戦」
- 多様な観点から変化に対して対応する「新奇歓迎」
- 組織のカルチャーを変えるためには心理的柔軟性を持つ
- 「変えられること」と「変えられないこと」を見分ける
- 「変えられないこと」は受け入れる
- 「変えられること」に取り組むために、「大切なこと」を明確化する
- 組織改善の施策その1 動物行動に基づく『行動分析』
- 組織改善の施策その2 言語行動に基づく『ルール支配』
- 人間は言語を扱うことで、好子・嫌子を超えた長期的みかえりを意識した行動ができる(ルール支配行動)
- ルール支配行動は3段階ある
- 言われた通り行動:行動そのものからではなく、ルールを提示した人からのみかえりによるもの。ルールに疑問を持たず、現状脱却できない
- 確かにそうやな行動:行動から得られるみかえりによるもの。ルールに誤りがあっても訂正可能である
- そんな気してきた行動:行動から得られるみかえりを増強/減少させるもの。ルール(きっかけ)自体が行動の強化・弱化につながる
- みかえりとルールをセットで説明し、確かにそうやな行動を増やす
- 組織/個人にとって大切なことを言語化し、そんな気してきた行動を増やす
実践
行動レベル(より小さい範囲)と関係性・カルチャーレベル(より大きい範囲)で、心理的安全性導入に関するアイディア集が紹介されています。それぞれすぐできそうなことをあげてみます。
感謝から始める
精神論ではなく、「他人がとった良い行動を強化するための好子」として感謝を伝えることには意義があります。特に漠然と「ありがとう」ではなく、
- いつ、どんな状況で
- どんな行動が自分にとってありがたかったか
と掘り下げることが大切だそうです。人によっては「そんな大したことしてないし…」と卑下とも取れる謙遜をされることもありますが、主語をあくまで「自分」とすることで、「あなたがどう思っていようが私は助かった」と伝えるとより好子としての働きが強まると考えられます。
さらに感謝を効果的に伝えるには、その人のことを普段から気にかけている・よく見ていることを明示するとよいと書かれています。全然気にかけてくれてない人から急に感謝されても、薄っぺらでとってつけた言葉と思われかねません。あくまで監視・マイクロマネジメントではなく、普段からの小さなコミュニケーションが重要ということですね。(一生言われてる)
のび太力を上げる
一人で解決できないことは他人を頼りましょう(本書では「のび太力」と呼んでいます)。特にリーダー的役割を担う人はこれを意識して行うことで、会話が促進されメンバー内の心理的安全を高めることができます。以下のような施策が効果的だそうです。
頼る:メンバーの役割や強みを把握し、頼る
自己開示:自分がどういう失敗をし、そこからどう学んだかを開示する
- 相手より一枚薄く鎧を着る:立場やプライドの自己防衛に徹するのではなく、相手より少しオープンでいる
どれも自分が苦手としているところなので積極的に実践したいですね。。
心理的安全であることを宣言する
こちらは組織レベルでの案ですが、心理的安全を宣言し、メンバー全員の意識を振り向けることが大切だと述べられています。特に立場が上の人がやる必要がありますが、例えば会議冒頭で「あらゆる意見・アイディアを歓迎する」「失敗や問題の報告は絶対に叱責せず、解決策を検討する場とする」といった宣言をするだけでも雰囲気は変わるでしょう。これを継続することでメンバー内にも心理的安全の意識が芽生え、互いの存在が「心理的非安全な行動を弱化させる」嫌子として働くと予想されます。
おわりに
現代的なマネジメントの基本である心理的安全について学びました。たとえマネジメントはしなくても、会社で働いている以上新人教育は必ず必要になるので、いつ自分が「上に立つ」立場になってもいいように、心理的安全性について知っておくことが大切だと思いました。圧の強い上長とかNoと言わせないリーダーに読んでほしい