自分の資産は自分で守る。『教養としての投資入門』
学生の頃までは「将来性があって技術的なことができれば給料はそこそこでいいや」とか「貯蓄とか一般財形しとけばいいでしょ」と雑な考えだったのですが、少し働いてみて気が変わりました。労働まじでしんどすぎ。働くのが嫌になったので気分転換に以下の本を読みました。
「教養としての」と名のある通り、給与を支給される全ての労働者が知っておくべき内容でした。しんどい労働で蓄えた財産を「経済」とやらに理不尽に減らされないためにも、投資はするべきです。
著者
ミアン・サミ氏という投資家(?)です。wikipediaに載っているぐらいには有名な人っぽいです。
医療工学・電子工学・経済学を専攻し、証券会社に勤めつつ様々な事業を興して色々ありながら執筆や講演活動をする異色の経歴って感じです。25歳で6000億の資金運用を任され、30歳で事業に失敗して破産寸前になるも現在では別事業で軌道に乗せてることからも資産運用にはかなり強そうです。ブロックチェーン技術の発展と普及にも携わっているとのこと。すごい(こなみ)
概要
- 投資とは未来予測であり、今のお金と時間を入力として未来の価値を受け取る行為である
- 生涯収入は三つの要素で決まる
- 自動投資
- 楽しむ投資
- 教養投資
- 自動投資とは老後資金のために行うものであり、長期で実施することで確実に資産を増やすことができる投資である
- 楽しむ投資とは試行錯誤の中で学びを得ながら実施することで、爆発的なアウトプットをもたらしうる投資である(投機とは別物)
- 教養投資とは生涯賃金を上げるための投資であり、今の時間と引き換えに自分が解決できる問題を増やす
多くの経済学者や投資家の理論に基づき、筆者の経験もミックスして上記の三つの投資(バル投資と呼ばれています)が提唱されています。
自動投資
自動投資はすぐに始められる上に、長くやればやるほどよいものとされています。一言で言えば「毎月自動的に、有名投資家がやってる割合で金融商品に投資する」と言うものですが、以下の考えに基づいています。
- 経済には4つの季節があり(一般に景気とか言われたりする)、季節によって価値が上がる資産、下がる資産が存在する
- 現金による預金一択では経済の季節による影響を大きく受ける博打であるため、適切に分散したほうが良い
- 年率1~2%のインフレを目標にコントロールされるため、現金の価値は長期的には下がっていく
- 人々が得意なことを仕事にして自由に取引する限り、経済は長期的には必ず成長する(国富論)
特に最後が重要で、自動投資の根幹な考えになります。長期的には必ず国は豊かになって行きますが、現金の価値は相対的に下がっていくため、運用が必要になるわけです。
といっても素人が一から投資対象を考えるのは無理なので、
- 有名投資家や機関投資家と同じ資産配分で
- 値動きを気にせず自動的に投資するような仕組みを作る
ことが大切だと述べられています。本で紹介されている資産配分は経済の4つの季節のどれにも対応できるものであり、不況下でも資産価値を守ることができるとされています。
楽しむ投資
楽しむ投資は一般的によく言われるような投資です(投機とは明確に別だと述べられています)。いわば「ゼロサムゲーム」であり、自動投資のように必ず資産を増やせるものではありません。むしろプロの投資家と同じ土俵で戦うことになるため、素人が安易に手を出しても高い確率で負けます。メインディッシュはあくまで自動投資であり、サイドメニューとして楽しむための投資として取り組むことが原則です。
楽しむ投資をする上では以下が大切だと述べられています。
- 脳の癖を知ること。人間は心理学的に自分に都合の良い考えをする傾向にあるため、それらを把握して冷静でいること。
- 金利を正しく理解し、現金・株式・債権・実物資産のアセットクラスの特性を知ること。
上にあげたのはあくまでもスタートラインに立つための知識です。他にも勝率を上げるために経済の季節あてや日記によるフィードバックなどが紹介されています。実際に楽しむ投資をするときは短絡的な勝った・負けたではなく、記録をつけた上でやるのが良さそうです。
教養投資
教養投資とは生涯賃金を上げることであり、それはつまり「より多くの問題を解決できるようになる」ことです。人は問題解決の報酬として給与を得ているので。
基本的に教養投資では時間を投資します。そのためには以下に気をつけます。
やらないことを明確にする。特に
- 社会全体のメガトレンドに逆らう
- 自分の性格スキルに逆らう
- 「知性」「エネルギー」「誠実さ」のない人と仕事をする
のは避ける。
一つの分野でトップになるのではなく、スキルを組み合わせて希少価値を出す。そのためのスキル習得を行う。
レバレッジを活用する。自分一人でやれないことはお金やチームに頼ってリターンを大きくできる。
まあ他のビジネス書でもよく言われるような事柄かもしれません。特段目新しさはないですが、興味深いのは「性格に合わないことはやらない」と言い切っているところです。本書でビッグファイブ理論に基づく性格診断というのを取り上げており、これに基づいて自身のスキルスタックを伸ばしていくという戦略をとっています。「性格次第では詰みです」と言われている気もしなくもないですが…
教養投資の良い点として「失敗しても資産が残る」ことがあげられます。実際に損をするわけでもなく、経験として身になるため自動投資と合わせて積極的に実施していくべきでしょう。
実践
とりあえず以下のことを実践してみようと思います。
自動投資する
本に書いてることをそのまんまします。つまり株式(投資信託)と債権と実物資産に毎月定額で分散投資します。おわり。
あまりにも簡単すぎてやってる感がないですが、この本を読んで得られた一番大きい価値かもしれません。
税務・会計を知る
スキルスタッキングの取り組みとして、社会人として知らないと損をする類の税(本書では無知税と呼ばれています)を把握し、会社の業績や状況などを財務諸表などから読み取れるようになりたいです。そのためにまず適当な本でも買って勉強するか。そもそもサラリーマンなのにお金の話知らなさすぎなんだよな。。
万人が身につけるべきスキルとして、他にも第二言語の習得などがありますが、当たり前すぎるのでここでは別のアクションを取り上げました。
まとめ
投資についての基本を学びました。本書でははお金の話だけではなく、教養投資のような概念についても学びを得ることができます。
自分は組み込みソフト開発に従事しているので、ついソフト開発についてのスキルを深める方向ばかりに気を取られがちです(それももちろん大切)。ですが「問題解決によって価値を生み出す」ことを念頭におけばソフトの専門知識だけでは足りません。というか自分以上に専門に明るい人がいれば自分は用無しになってしまうので、差別化の意味でもスキルスタックは重要です。願わくばこの取り組みが生涯賃金や資産を少しでも高めて欲しいものです。